忠実と不忠実

2020.09.25(21:31) カテゴリ:Essay

「ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である。ごく小さな事に不忠実な者は、大きな事にも不忠実である。」

不正な管理人について書かれた新約聖書の箇所ですが、この言葉を聞いて身のすくむ思いがしました。

自分にとっての大きな事は「絵を描く事」であって、それ以外の事は「小さな事」と捉えていた若い時の私。

生活のために清掃のアルバイトをしながら絵を描く毎日でしたが、生活のためのアルバイトを恥ずかしながら告白すると「小さな事」と捉えていました。とは言え、手を抜いているつもりはなかったし、だからこそ清掃会社の上司や同僚、また勤務する駅ビルの社長さんとも仲良くさせていただいたと思っています。

でも、

「一刻も早く、絵で生計をたてたい!」

と思っていた私には、絵を描く事以外は「小さな事」と捉えていたのです・・。

そして時が過ぎ、妻と結婚して、義父母と同居するようになって、「小さな事に不忠実である私は、大きな事にも不忠実であった」ことに気づくことになりました。

義父はとにかく人間としてのクオリティが非常に高い人で、聡明で優しく、そしてあらゆることに徹底しています。とにかく「手を抜かない」のです。

その義父を前にしては、私の未熟さ、いい加減さを直視せざるを得ず、恥ずかしさや情けなさでいっぱいになりました。

娘が生まれ、ミツイパブリッシングをスタートすると、育児・家事・仕事でやることがてんこ盛り。私にとっての「大きな事」であった「絵を描く事」もままならなくなりました。

育児や家事をいい加減に済ませば、絵を描く時間も幾分かは捻出できるかもしれませんが、義父との出会いによって、新約聖書の言葉を現実のこととして受け止められるようになった私は、「絵を描く事」以外の事こそ丁寧にやらなければならない、と思うようになりました。毎日の生活の中の「小さな事」を丁寧にやることが、結果として私にとっての「大きな事」につながると確信するようになったのです。

絵を存分に描けるようになるのは、多分、娘が巣立った後になると思います。その日を楽しみにしながらも、今ある娘との日々や毎日の生活を、丁寧に、楽しく、そして大切に過ごしていきたいと思っています。