HELP(2020)

私は自著『福音ソフトボール 山梨ダルクの回復記』を執筆するため、薬物依存症回復施設である山梨ダルクを訪れたことから、根強い偏見にさらされる依存症当事者の声を聞く機会を得ました。

その後、ギャンブル依存症回復施設のグレイス・ロード、旭川市のポーラーベアーズなどご縁をいただき、昨年9月のカトリック旭川5条教会で開催された山梨ダルク代表の佐々木広さんの講演会では、ギャンブル依存症に苦しんでいる参加者の苦しい胸の内の告白を聞きました。

この絵は、依存症に苦しむ人々を想って描いたのですが、出来上がってみると、もう少し広い捉え方もできる絵だと感じています。

ロスジェネ世代に代表されるように、個人の努力不足や能力の問題ではなく、時代の巡り合わせで就職の機会を逃し、不安定な職を転々として食いつないでいる人たちも多く、そういった人たちは結婚もこどもも望めない状況で50歳近くにもなっています。

また社会の構造的な問題から、貧困に喘ぐ人たちも多くいます。社会の構造に組み込まれてしまったら、そこから個人として抗うことはとても困難だと思っています。

この世界には、心の底から「HELP(助けて)!」を求めている人がたくさんいます。

依存症者にしても、時代の巡り合わせや社会の構造から貧困に喘ぐ人たちにしても、孤独で誰一人寄り添ってくれる人がいない中頑張り続けている人にしても、「HELP(助けて)!」を言える社会であってほしいし、その叫びに応える社会であってほしいと思っています。