愛猫の死
2018.10.17(0:00) カテゴリ:Essay実家で13年間飼っていた愛猫が死にました。
13年前、近所のホームセンターで捨て猫や捨て犬の里親募集のイベントがあり、母と一緒に出掛けました。たくさんのケージの中の小さな猫や犬が、可愛らしい鳴き声で行き交う人たちに自分の存在を訴えかけていました。
そんな中、一番下のケージの中に異様に身体の大きな一匹の猫が、行き交う人たちに目もくれず、どーんと横になっていました。「なんか、この猫いいな」と思った私。13年間飼うことになる愛猫との出会いです。
「この猫をいただきたいのですが」とスタッフに声を掛けると、「えっ、いいんですか?11ヶ月の成猫ですよ」と驚かれました。「この猫がいいんです」と私。通常、生まれたばかりの可愛い子猫をもらって行く人が多いそうです。
こうしてこの猫は、私たちの家族の一員になりました。
聡明で優しいこの猫をもらってきて、本当に良かったとつくづく思います。
私はその後、東京や北海道に行ってしまい、帰省した際にこの猫と顔を合わせる程度でしたが、父母にとっては子供たちが巣立ってしまってガランとした家にこの猫がいてくれたことで、大いに寂しさを埋めてくれたと思っています。
9月に実家に帰省した際、この猫が治らない病気に罹っていることを聞かされました。
ご飯も食べることが出来ず、水もほとんど飲めなくなり、ふらつきながらも動けていたのに、次第に動くこともできなくなった愛猫。最期の二日間は横になって静かに呼吸をするだけでした。
この愛猫が動けなくなる前の夜中、私はこの猫の頭を撫でながら、13年前のホームセンターでの出会いのことや、父母の寂しさを埋めてくれたことなど今までの感謝の気持ちを伝えました。愛猫はよろめきながら静かに私の側に横になり、尻尾を振って応えてくれました。気持ちが通じた瞬間です。この時、私はこの猫とお別れが出来ました。
そして二日後にこの愛猫は死にました。
一晩、亡骸の隣で眠って、あくる日の朝に埋葬しました。
偶然帰省した時に、この愛猫の最期に立ち会えたことは非常に良かったと思います。たくさんの思い出を与えてくれたことに加えて、死別の経験が少ない私にとって、死に行く過程をその姿で示してくれたこの愛猫には心から感謝しています。
ありがとう。安らかに。