オレンジ色の光
2021.02.04(21:00) カテゴリ:Essay私の山梨に住む父親は80才になるのですが、とても元気でいます。
近所の公園や土手を散歩して季節の移ろいを楽しんだり、少し先にあるショッピングモールに出掛けては、ウインドウショッピングや美味しいものを食べたりしている様子です。
齢を重ねるに従って穏やかに丸くなり、今では「呑気な父ちゃん」で、朗らかに毎日を過ごしています。
父親は元々東京で生まれて、戦前は楽器店を営む父親(私のおじいちゃん)のもと、それなりに裕福な生活をしていたようです。
しかし戦争が激しさを増し、東京で生活することが危なくなってくると、詳しい経緯は分かりませんが、山梨県の八ヶ岳の麓の山中に疎開しました。
電気も水道もない未開の地で始めた生活は貧しさを極めたようで、それまで都会暮らしをしていた母親(私のおばあちゃん)は、とても惨めな思いをしたと聞いています。
その未開の地で生活をしていた少年だった父親が、夜中に不思議な出来事があったことを、私が小学生の頃に話してくれたことがありました。
それは、夜中に目が覚めた少年だった父親は、空から明るいオレンジ色の光が落ちてきて辺り一面が明るくなった、という出来事です。
「はじめは焼夷弾かな、と思ったけれど、人も住んでいないこんなへんぴな場所に焼夷弾を落とす訳もないだろう、と思ったんだよね」と、話す父親。オレンジ色の光の真相は、未だによくわからないようです。
戦争は教科書の中の話と思いがちですが、私の父親も戦争によって大きく人生が変わってしまった一人で、決して遠い過去の話でないことと、「このオレンジ色の光って、一体何だろう・・? まさか、未知との遭遇・・」という、不思議と不安の入り混じった気持ちになって聞いた、父親からのお話です。