卒業式の思い出

2021.03.14(21:00) カテゴリ:Essay

3月は卒業シーズン。

慣れ親しんだ学校と、同じ時間を過ごした同級生たちとの別れの寂しさと、4月から始まる新しい生活に胸を弾ませる季節で、私自身の遠い過去の記憶を思い出すと、中年になった私でもなんだか胸がキュンとなってしまいます。

中でも、やりたい放題をやっていた小学校の卒業は思い出深く、記憶が鮮明です。

卒業するのが寂しく、涙を堪えるのがやっとで終えた卒業式。いろいろな思い出が交錯し、帰宅するのも惜しい気持ちで小学校を後にして、家に帰る途中、近所のS商店に立ち寄り、自販機で冷たいスポーツドリンクを買おうと硬貨を投入しました。

ボタンを押すと、けたたましい音を立ててスポーツドリンクが出てきたのですが、手にとってみてびっくり。なんと「つめた〜い」と表示されたスポーツドリンクが、ホカホカと温かいのです。

「えっ」

と、一瞬言葉を失った私。

多分、業者が商品の入れ間違いをしたかと思うのですが、想像だにしなかった事態に目を白黒させてしまい、さっきまでのしんみりと感傷的になっていた私は、何処かに吹き飛んでしまいました。

しばらく呆然とした私でしたが、折角買ったので飲み口を開けて一口飲んでみると、「もわ〜ん」とした形容し難い味が口いっぱいに広がりました。

別れを惜しむ気持ちと、温かいスポーツドリンク。

私のちょっとヘンテコな卒業式の思い出です。