読書っていいな!(『私にとって神とは』遠藤周作)

2018.03.15(4:32) カテゴリ:Essay

一冊の本との出会いが、人生を大きく変えることがあります。

私にとってのその一冊が、遠藤周作さんの「私にとって神とは」です。

二十代中頃、上京してアルバイトをしながら絵を描いていた私は、貧しさの中、絵を描くことや生きるということに悩んでいました。

常に頭の中には重苦しい「もや」がかかり、陰鬱な毎日を過ごしていたのですが、当時住んでいた東京・国分寺市の駅周辺を歩いていたとき、何の気なしに視界に入った古本屋さんにふらりと立寄りました。

小さな古本屋さんの店内をぐるりと見渡すと、奥の棚にあった一冊の本が目に留まりました。

「私にとって神とは 遠藤周作」

遠藤周作さんの本は好きで、高校時代から「海と毒薬」「沈黙」「深い河」などの代表作は読んでいましたが、この本の存在は知りませんでした。

この本は、カトリックの信徒であった遠藤周作さんによる、神についての一問一答形式の本で、信仰をおもちでない人の立場に立って、神についての初歩的な疑問に答えるといった内容です。

手にとってパラパラと中を見てみると、文章にたくさんの赤線が引かれていて、元々の持ち主のこの本に対しての食らいつき方が伝わってきました。

「この本の持ち主も、生きるということに苦しんでいたんだ・・」

この本との出会いから、私はその後カトリックの洗礼を受けることになります。

一冊の本との出会いが、人生を大きく変えることがあります。

2013年から妻とミツイパブリッシングという小さな出版業を始めましたが、「本の持つ力」を心底実感した私は、非力ながらも「本の可能性」を信じつつ、読者を励まし力づける本を世に送り出していきたいと思っています。