山梨県立美術館「美術館と私」エッセイ展

2019.04.16(15:06) カテゴリ:Essay

2019年3月まで山梨県立美術館で開催されていた『「美術館と私」エッセイ展』に、私のエッセイを含む約40点が展示されました。

私のエッセイ全文を掲載します。

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『私の未来と出会った場所』

小学5、6年生の担任の先生は美術教育に力を入れていて、年に数回、マイクロバスでクラスのみんなを山梨県立美術館に連れていってくれました。

色彩豊かな外界とは一転、一歩館内に入ると今まで体験したことのない異空間が広がりました。ミレーを代表とする名画の感動と共に、広がる静寂や怪しさすら感じさせる抑えられた照明。肌に吸い付くような空気の温かさと湿度。どれもこれもが、私にとって不思議な美術館初体験の記憶です。

精神的に参ってしまった二十代前半、健康回復のために毎日美術館の庭を歩きに来ていたこと。二十代半ばで上京するか迷っていた時、夜の美術館の庭に忍び込み、夜空を眺めながら「これからどのように人生を選択していけばよいのか」を考えたこと。上京して東京生活に疲れた時は美術館に来て英気を養い、K市の風景シリーズとして美術館の庭を描き始めたこと。私の人生のあらゆる局面で、山梨県立美術館は共に在りました。

現在、私が絵を描く人生の起点は、小学生の時の美術館での不思議な感動体験だったと思っています。

美術館でひらいた、私の未来。

小学生だった私が、私の未来と出会った場所。それが私にとって、山梨県県立美術館だったのです。